SES(システムエンジニアリングサービス)オフショアとは、システムの特定の工程や業務に必要なITエンジニアの労働力を、海外のIT企業から一定期間提供してもらう契約形態です。一般的に「準委任契約」という形式をとり、成果物の完成を目的とするのではなく、エンジニアの「労働時間」に対して対価を支払うのが大きな特徴です。必要なスキルを持つ人材を、必要な期間だけ柔軟に確保したい場合に適した開発手法と言えます。
SESを正しく活用するためには、他の契約形態との違いを明確に理解しておく必要があります。
クライアント専任の「チーム」を長期間確保し、開発拠点のように機能させるラボ契約(ODC)に対し、SESは「個人」の技術者を必要な期間だけ確保するスポット的な活用が中心です。ラボ契約が中長期的なプロダクト開発に向いているのに対し、SESはプロジェクトの繁忙期における一時的な増員や、特定のスキルを持つ人材の短期的な確保に向いています。
SESとIT派遣は、外部のエンジニアがクライアント先で業務を行う点で似ていますが、法的に最も重要な「指揮命令系統」の所在が異なります。IT派遣では、クライアント(派遣先企業)がエンジニアに対して直接、業務の指示や命令を行えます。一方、SES契約では、エンジニアへの指揮命令権は、エンジニアが所属する海外のIT企業(受注者側)にあります。クライアント(発注者側)は、業務の依頼はできますが、直接的な指揮命令は行えません。
SESは、繁忙期の増員やニッチスキルの短期確保に強い一方で、チーム単位(ODC/ラボ)や成果物責任(請負)とは運用の勘所が異なります。オフショアを組み合わせると、着手の早さと人材の選択肢が広がり、国内だけでは難しい体制の弾力性を得られます。次に、SESオフショアならではのメリットを押さえましょう。
「特定のプログラミング言語に精通したエンジニアを2ヶ月間だけ2名増員したい」といった、プロジェクトの状況に応じた柔軟なリソース調整が可能です。開発が本格化するタイミングでの増員や、急なトラブル対応のためのスポット的な要員確保など、機動的な対応ができます。
海外のエンジニアを活用するため、日本国内のSESを利用する場合と比較して、エンジニア一人あたりの月額単価(人月単価)を抑えることが可能です。特に開発が長期化した場合、そのコストメリットは大きなものになります。
Web系のモダンな技術から、基幹システムで使われるレガシーな技術まで、海外の豊富な人材プールから自社が必要とする特定のスキルセットを持つエンジニアを探しやすいという利点があります。国内では見つけるのが難しいニッチな技術を持つ専門家を確保できる可能性もあります。
すでに開発会社に在籍しているエンジニアのスキルとスケジュールを調整するだけなので、新たに人材を採用する場合と比較して、契約から実際の業務開始までの期間が短い傾向にあります。スピーディに開発体制を強化したい場合に有効です。
これらの効果を最大化するには、どの国の人材プールをどう使うかの見極めが重要です。判断軸は、アサイン速度、スキルマッチ率、英語を含むコミュニケーション、交代SLAの出しやすさ、最終的にかかるお金の合計の5点。まずは各国の特性を俯瞰して、自社の条件に合う体制を選びましょう。
前述の通り、エンジニアへの直接的な業務指示は行えません。あくまで契約に基づいて業務を依頼する形になるため、自社の社員のように細かな指示を出して管理したい場合には不向きです。
チームとしてではなく、個人のスキルに対して契約するため、提供されるアウトプットの品質は担当するエンジニアの能力や経験に大きく左右されます。事前のスキルチェックや面談が非常に重要です。
言語や文化、商習慣の違いから、コミュニケーションに齟齬が生じる可能性があります。特に、細かな仕様のニュアンスや業務の背景を正確に伝えるための工夫が求められます。
エンジニアはあくまで依頼された業務をこなす立場のため、プロジェクト全体の進捗管理やタスクの割り振りは、クライアント側が主体的に行う必要があります。丸投げはできません。
上記の課題は、契約と運用ルールを先に決めておくことで抑制できます。例えば
こうした“先回り”の設計が、品質のばらつきや指揮命令の混乱を最小化します。
各国の費用感・時差・強み/留意点を俯瞰し、自社の評価軸(アサイン速度/スキルマッチ/体制の伸縮性/運用ガバナンス/お金の使い方)に照らして候補を絞り込みます。SESでは、面談〜着任のリードタイム、交代SLAの現実性、英語運用の確実さがとくに効きます。
| 国名 | 平均開発単価* (USD/時) |
JSTとの時差 | 主なメリット | 主な注意点 |
|---|---|---|---|---|
| インド | 12 – 20 | −3 h30 m | 世界最大級のIT人材層、AI・クラウド等の先端技術に強い | 離職率・品質ばらつきが大きく、チーム管理が必須 |
| ベトナム | 14 – 19 | −2 h | コストと品質のバランスが高く、日系プロジェクト実績も豊富 | 人件費上昇・都市部集中による人材偏在 |
| フィリピン | 約 8 – 15 | −1 h | 公用語が英語、BPO業界で鍛えたコミュニケーション力 | 上級人材は単価が上振れ・通信インフラの地域差 |
| ウクライナ | 22 – 30 | −6 h(夏時間基準) | 欧州品質・数学/AI系スキルが高い | 戦時リスク・電力供給不安定 |
| タイ | 15 – 21 | −2 h | インフラ安定、日系企業が多く文化的親和性も高い | 英語対応は限定的でBrSEが必須、地方との単価差 |
| ミャンマー | 19 – 26 | −2 h30 m | ASEAN内で屈指の低コスト、若年層豊富 | 政治・通信の不安定さ、外貨送金規制 |
| バングラデシュ | 17 – 25 | −3 h | 若年人口比率が高く市場が急成長中 | 大規模案件経験者がまだ少なくプロセス成熟度が低い |
この比較を踏まえると、インドは人材層の厚さと英語基盤、短期アサインや交代SLAの出しやすさ、標準化された開発運用という観点で、SESオフショアの実務に適した選択肢だと分かります。
インドは世界でも有数のIT大国であり、JavaやPython、PHPといった主要なプログラミング言語はもちろん、AI・機械学習、クラウド、ブロックチェーンといった先端分野まで、非常に幅広いスキルを持つエンジニアが豊富です。プロジェクトが必要とする多種多様な技術要件にマッチする人材を見つけやすいという大きな利点があります。
人材の母数が大きい分、特定の技術領域や業界知識に深く精通したスペシャリストも存在します。例えば、金融業界向けのシステム開発経験が豊富なエンジニアや、特定のクラウドサービス(AWS, Azure, GCP)の高度な資格を持つエンジニアなど、ハイレベルな要求にも応えられる人材を確保できる可能性があります。
SES契約では、エンジニア個人と直接コミュニケーションをとる場面が多く発生します。インドではビジネス公用語として英語が広く使われているため、技術的な仕様の確認や日々の進捗報告などを、言語の壁をあまり感じることなく円滑に進めることが可能です。これは、プロジェクトをスムーズに進行させる上で非常に重要な要素となります。
インドは、Java/Python/フロント〜クラウド/AIまでの幅広いスタックでスキル面談→短期着任を実現しやすく、英語での要件精緻化と時差を活かした日次サイクルで、待ち時間とやり直しを減らしながらリリースを早める運用に向いています。
ここからは、「すぐに大口アサイン」「レガシー刷新のモダナイゼーション」「上流からの伴走」という案件ニーズ別に、適したパートナー候補をご紹介します。
SESオフショアは、必要な期間に必要なスキルを素早く確保し、プロジェクトを止めないための実践的な選択肢です。成功の鍵は、アサイン速度・スキルマッチ・交代SLA・コミュニケーション運用を契約とプロセスに落とし込むこと。
なかでもインドは、人材層の厚さと英語基盤を活かし、短期着任と日次サイクルで待ち時間とやり直しを減らしつつ、最終的にかかるお金の合計を小さくし、リリースを早めるのに適しています。まずは各国比較表で前提を整理し、自社の案件ニーズに合う候補を検討してみてはいかがでしょうか。
漏えいは避けたい、古い基幹は止めたくない、戦略は現場まで落とし込みたい——オフショア開発の悩みは企業ごとに違います。
ここでは自社の目的に合う支援会社を選ぶことで、最短ルートで自社にあったパートナーに辿り着ける「目的別」インドのオフショア開発会社おすすめ3選」をご紹介します。
金融、電気通信、EC、広告&メディア、教育、ヘルスケアなど
KDDI、ドコモ、DNP、マクロミル、博報堂、ブリヂストン、リクルートなど
製造業、医薬品、小売業、メディア、電気通信など
※公式HPに記載なし
製造業、情報・技術、自動車、ハイテック、建設、教育、金融など
※公式HPに記載なし